鳥が好きなんですよ~と話すと、よく「1番好きな鳥は何?」と聞かれることがあるのですが、「カササギです!」と答えると、「え、サギ…?」と周りを困惑させております。
カササギのどんなところが好きなのか、とご質問いただくことがあり、そういえば…と昔を懐かしく思い出したので、記事にしておこうと思います。
〇カササギとは
カササギはカラスの仲間で、カラスよりひと回り小さく、胸とお腹が白く、光にあたると綺麗な色に見える長い尾羽をもつ鳥です。
人為的に日本に持ち込まれた外来種ではあるのですが、佐賀県では生息地が国の天然記念物に指定されているというちょっと変わった鳥です。
〇カササギとのご縁
私は5歳の時に祖母につれられて参加したバードウォッチング教室がきっかけで鳥に興味を持ちました。
その後、薮内正幸さんの鳥の図鑑に魅せられて鳥にハマり、小学生を対象とした地域のバードウオッチング教室に通い始め、気がつけば二年間毎月通っていたのです。
ある日、講師の方が「そんなに好きならもっと大きな探鳥会に連れて行ってあげるよ」と言ってくださり、野鳥の会愛媛の探鳥会に通うようになりました。
(中央で何かを観察しているのが私)
大人ばかりの中に子供一人なので、周りの大人たちに手厚く指導を受け、識別こそ上達はしませんでしたが、9歳で野鳥の会にも入会し、鳥を好きな気持ちはどんどん膨らんでいきました。
ある日、小学校の授業で作った壁新聞が環境省主催のこどもエコクラブの県代表に選ばれ、長崎県の佐世保市に発表に行ったのですが、お土産売り場で綺麗なブローチだなと思い、カササギだと知らずに持ち帰りました。(母によると小学生が買うにしては結構高かったらしいです)
(いろんな方からいただいた鳥のバッジを自分の帽子につけて探鳥会に通っていたため、私のビンバッジコレクションに(右下))
そして二年後…
家から3時間ほど離れた、東温市・上浮穴郡久万高原町の皿ヶ峰で開催された探鳥会に参加した帰り道、母と車に乗っていたら、目の前に全く見たことのない鳥がとまりました。
カラスのような体つき…、白いお腹…、長いしっぽ…、
「お母さん、この帽子のブローチの鳥がいる!!」
そこまでまだ鳥に詳しくないけれど、確かにブローチと同じ鳥がそこにはいました。
(中央がカササギのブローチ)
後続車の参加者の人を止めて、ブローチを見せながらこの鳥がいた!と話をしたのですが、「その鳥はカササギといって佐賀県と一部にしか生息していないから、たぶんカラスと見間違えたんじゃないかなぁ」と言われました。
私はちゃんとこの目で見たのに…と思ったのですが、小学生の言うことはなかなか信じられず…
その後、よく気にかけてくださっていたベテランの方(IZUさん)が後から降りてきたので、説明すると、もしかしたらいるかもしれないと一緒に探してくれました。
私は家から遠い場所なのでその後は来ることができなかったのですが、その方が調査を続けてくださり、数日後にカササギであることが判明!しかも営巣していることがわかり、写真に収めて四国ではじめての発見となりました。
当時の新聞記事↓
(IZUさんのHPよりお借りしました。カササギの様々な様子を写真に記録してくださっています。→カササギ詳細)
この時初めて鳥を見るだけではなく観察する道に進みたいと思い、小学校の卒業式では「鳥の研究者になる!」とみんなの前で豪語したことを覚えています(笑)
四国初の営巣を発見したのはIZUさんですが、その後も営巣している様子が見つかり、定着すると思われていました。二年前になんとなく買ったブローチが起こしてくれた奇跡に感動しました。
2005年、二年後のIZUさんの記事「新緑、皿ヶ嶺探鳥会」→新緑、皿ヶ嶺探鳥会
しかし、カササギはその後姿を消し、再び現れることはありませんでした。
もし、家から近い場所だったら、もっとカササギの生態について調べられたのにな…ととても残念に思いました。
11年後、2014年の記事→皿ヶ嶺、皿巡り
〇将来の目標を決めてくれた鳥
カササギとの出会いはあくまできっかけに過ぎず、その後は漠然と研究がしたい!と思っているだけでしたが(鳥を洗う仕事に就きたいと思っていた時期もあった)、アホウドリの研究をされている長谷川先生にお会いしたり、鳥を研究できる大学について探したりしている時に、九州大学で江口和洋先生がカササギの研究をされていることを知りました。
結果的に九州へのご縁はなかったのですが、大学の時に鳥学会で江口先生にお会いすることができ、その後、カササギの論文を送っていただいたり、九州や苫小牧ででカササギの研究をされている方とお会いすることもでき、夢が膨らんでいきます。
しかし、私の大学は鳥専門の教授はいらっしゃらなかったので、調査研究のために九州や苫小牧まで行くことはできず、泣く泣く諦めることになりました。(しかも、江口先生は退官されるということでダブルショック!!)
その後はカササギつながりで外来種(ソウシチョウ)の調査をしようとも考えましたが、自分の行動範囲も限られており、最終的にはいろいろなご縁がありウチヤマセンニュウの研究を行いました。(それでも魚の研究室で鳥の研究ができただけでも奇跡なのです。外部アドバイザーの野鳥の会の皆さまには感謝しかありません)
〇学生時代のあれこれはこちらからどうぞ
そんなわけで、卒業後は鳥の道に進まず紆余曲折…でしたが、カササギに対する愛情は変わらず、何かとカササギ関連するものを収集するようになりました。
しかし、カササギは繁殖地が限られているせいで日本では非常にマイナーなので、絵を描かれる方も少なく、シマエナガのような市民権を獲得することもできていないのが悲しいです…。
最後にカササギの魅力について少しだけ語らせてください。
〇カササギの魅力
1、存在自体が愛らしい
(7年かけて作り上げた オランダ テア・グーヴェルヌール社の「Magpie」(カササギ 鳥) クロスステッチ)
最初にブローチを見た時から、潜在的に好きな色と形なんだと思います。基本的に尾羽の長い鳥とカラス科、猛禽類が好きなのですが、羽や尾羽の先に光沢があり、黒というより青か緑に見えるところも素敵です。
また、カササギは鳥類の中でも大きな脳を持っており、ミラーテストで鏡に映った像が他の個体ではなく自分であることを認識したといわれているので、頭が良いそうです。ずる賢そうな見た目もなかなか良いのです。
英名はMagpieなのですが、学名がPica Picaというのも、響きが何だか可愛らしくて好きですね。(世界には亜種がたくさんいるそうで、同じカササギでも微妙に違いがあることも奥が深いです)
2、文学的にも愛されている
(昔一目ぼれして買った絵本。なんと廃盤になっているそうです…ショック!)
「かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける」
日本にカササギが入ってきたのはもっと後だとされてるので、実際はこの歌の鳥はカササギではないと言われていますが、小学校で百人一首大会が開催されたときに一番先に覚えた歌なので印象深いです。
また、キリスト圏では不吉な鳥とされ「泥棒」よばわりされることもありますが、アジア圏では七夕に織姫と彦星を運ぶ縁起の良い鳥とされ「カチガラス」の相性で親しまれています。
(それでも、七夕でカササギを思い浮かべる人は少数なので、もっといろんな方に知ってもらいたいなぁとは思います)
地域によって不吉だったり縁起が良かったりする文化的背景も面白いですね。
ちなみに、ポールマッカートニーもカササギのファンらしいです笑
ポール・マッカートニー、ブラジルでバードウォッチングをしているところを目撃される | NME Japan
3、まだまだ謎の多い鳥
(オストハイマー社のカササギのオブジェ)
外来種でありながら、生息地は天然記念物に指定されており、日本に来た経緯も謎…。ソウルでは市鳥になっていますが、現在では現在増えすぎて有害鳥獣に指定されているんだとか…。
ちなみに、日本では電柱に巣を作ることが多く、停電を引き起こすこともあるんだそうです。電力会社にカラスの巣と間違えられて撤去されそうになることが愛媛でもありました。(電気が止まっても困るし、保護と経済活動のバランスは難しい…)
佐賀県だけでなく、北海道の苫小牧市でも繁殖が確認されていますが、2011年に酪農学園大学の研究グループが調査を始め、2015年に苫小牧個体のDNAはロシアのと同じで、韓国(佐賀)のとは異なることが判明したそうです。
↑ 学生時代に鳥学会でお会いしたときに、丁度カササギのDNA分析をやっていると教えてくれました。一緒に研究したかったなぁ…
カササギの繁殖地はパラパラと全国に散らばっていて、遺伝的系統やその生態など、まだまだ謎に包まれた鳥だというところも大変魅力的です。
これからの活動
(2015年にジャパンバードフェスティバルのJAWLAS展示会に出した作品。生態学的科学的には突っ込みどころ満載ですが、雰囲気で見てくだされば…)
こうして振り返ってみると、地域の講師の方との出会いや、野鳥の会に入ってから面倒を見てくださったIZUさん、無理難題を乗り越え卒論にアドバイスくださったみなさんのおかげで、今の自分があるんだなぁと改めて思いました。
これからも、鳥だけに関わらず、きっともっといろんな方との出会いや支えによって、新しいことに挑戦していけるのだと思います。
本当はカササギの絵を自分でもっと描きたい…!!と思うのですが、佐賀県に行ってたくさんスケッチしてから描きたいなどと欲張っているうちに、まだ1枚しか描いておりません(今見るといろいろと突っ込みどころ満載だし…)
カササギのことになると、ついつい長くなってしまいました。20年前に見た美しいカササギの姿は今でも目に焼き付いていて、本当に私にとってかけがえのない鳥です。ライフバードとでもいうべきでしょうか。
カササギのことをもっと知ってもらうためにも、これからたくさん描いていきたいなと改めて思いました。グッズ収集もコツコツ続けようと思うので、どこかでカササギのグッズを見かけたら教えてください~!